2007年8月27日 (月)

星のお姫さま 35

車に乗り込んだサユリはストーカー男を見た。

男はサユリ達を見ながら、何かを待っているようだった。

「じゃ、行きますよ」とドライバーの男が二人に声をかける。

「お願いします」とサユリが返した。

車は走り出したが、ストーカー男の視線はサユリ達の車を見

ているようだった。

マキは車に乗った瞬間、サユリの胸に顔をうずめてかがみこ

んだ。

そんなマキを見ていたサユリは、マキの事が本当に可哀想に

なってしまった。

車はロータリーを出て国道にさしかかった。

その時サユリはドライバーの男に

「ね。今日マキちゃん予約入っている?」

と聞いてみた。

するとドライバーの男は「わかんないっすね。確認してみます

?」と聞いてきた。

サユリは「お願いします」と言って確認してもらう事にした。

ドライバーの男は携帯電話で、確認をとった。

すると「マキさん、一発目で予約あるみたいっすね」と言った。

サユリとマキの不安は的中した。

二人は“間違いなくあのストーカー男だ!”と思った。

マキの震えはより激しくなっていった。

サユリは力いっぱいマキを抱きしめて「大丈夫。大丈夫だから

ね」と繰り返しマキに言った。

そして車は店に着いた。

サユリは「マキちゃん。行こう。安心して、ここはマキちゃんの

味方しかいないから」と諭すように言った。

一言も言葉を発さなかったマキが力ない声で

「うん」

と言った。

二人は車を降りて、店へ入って行った。

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2007年8月20日 (月)

星のお姫さま 34

駅に着いた二人は改札を出て、駅前のローターリーで送迎用

の車を探した。

いつも見慣れている車は見当たらなかった。

マキの震えはまだ止まっていない。サユリはマキの肩を抱いて

「大丈夫」と繰り返していた。

マキを気遣いながらサユリが視線を周りに送ると、ストーカー男

の姿が目に入った。

ストーカー男は携帯電話でどこかに電話をしている。

サユリは店に電話しているのだと察知した。

しばらくするとサユリの携帯電話が鳴った。

送迎の車のドライバーからの電話だった。

「もうすぐ着く」との連絡だ。

ほどなくして、サユリ達を乗せる送迎用の車が駅前ロータリー

へ入ってきた。

送迎用の車からは店に来ていた客が3名降りてきて、ドライバ

ーの男が「ありがとうございました」と言っていた。

客が完全にひけるのを待って、サユリはマキの肩を抱いたまま

歩きだした。

「おはようございます」とサユリがドライバーの男に声をかける。

すると男も「おはようございます」と返事をした。

そして、二人は車に乗り込んだ。

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2007年8月13日 (月)

星のお姫さま 33

二人は電車に乗った。

ストーカーの男も隣の車両に乗ってきた。

サユリとマキはシートに座って、あえて普通に振舞っていた。

会話が聞かれているとは思えないが、会話の内容もいつもの

ように話をしていた。

サユリが気づかれないようにストーカーの男に視線をやると、

男は携帯電話を見るふりをしながらこちらを伺っているのが分

かった。

サユリとマキも普通に振舞ってはいたが、次第に怖くなってきた

電車の中で襲われたりはしないと思うが、他人に尾行されるよ

うな事は誰だっていい気分はしない。

店の最寄駅までの時間がすごく長いものに感じた。

サユリは駅で降りた時に、すぐに送迎用の車に乗れるように電

車の中から店に電話をした。

到着時間を告げるとその時間に送迎があるようだ。

「よかったね。マキちゃん。すぐに迎えがくるってさ」

サユリは笑顔で言ったがマキは少し震えている様子だった。

「どうしたの?マキちゃん?」

「アイツが指名してきたらどうしよう?」 マキは明らかに怖がっ

ている。

「店の中でなにかあったらすぐボーイを呼べばいいよ」とサユリ

が言った。

ソープランドの部屋にはインターホンが設置されている。

コンパニオンはそのインターホンでボーイに連絡できるようにな

っている。

サユリはマキの恐怖心をとってあげようと必死だった。

しかし、マキの震えが止まらないうちに無常にも電車は駅に着

いた。

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2007年8月 6日 (月)

星のお姫さま 32

翌日、サユリはマキを迎えに行った。

マキが普段使っている駅で降り、マキに電話をした。

発信音が数秒鳴った後、マキがでた。

「もしもし、おはよう!」 マキが元気な声がした。

「おはよう!約束通り迎えにきたよ」

「サユリさん。改札のところにあるタバコの自販機の前に誰か

いる?」

サユリは自販機に目をやり「誰もいないよ」 と告げた。

するとマキはホッとした様子で 「よかった~。前はその辺にい

たんだよね。じゃあ、すぐ行くね。待ってて」 と言って電話を切

った。

サユリも安心した。とりあえず今日は平気そうだ。

しばらくするとマキがやってきた。

昨日の格好とは明らかに違う感じでいつもサユリが見ている

マキの姿だった。

マキはサユリに気がつくと手を振ってサユリに近づいてきた。

サユリもマキに手を振った。

マキが「サユリさ~ん」 と言いながら小走りになった瞬間、動き

が止まった。

サユリは異変にすぐ気づき、後ろを振り返った。

すると、後ろに20代くらいの男が一人立っていた。

サユリはその男がマキのストーカーだと初めて見たにも関らず

分かったのである。

「サユリさん・・・。あの人・・・」

マキが小声でサユリに言った。

「うん。私もすぐ分かったよ」

サユリも小声で言った。

その男は痩型で、髪の毛は若干長め。メガネをかけているフリ

ーター風の男だった。

サユリは「普通にして行こう」 とマキに言った。

マキも「うん」 とうなずいて、二人は改札を通ってホームへ歩い

て行った。

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2007年7月30日 (月)

星のお姫さま 31

サユリにはマキの辛さが正直よく分かっていなかった。

サユリ自身ストーカー被害にあった事がないからだ。

ただ、同じ職業の人間としてストーカー被害にあった時の気持

ちの辛さはなんとなく分かっているつもりではあった。

「マキちゃんさ、明日は出勤する?」

「う~ん・・・。正直考え中・・・」

「明日、出勤しようよ。私マキちゃん迎えに行くから一緒に行こう」

「サユリさんにそこまでしてもらう理由がないよ・・・」

「いいって!気にしないで。私だっていつそういう事になるか分

からないし、私にできる事は何でもしたいの」

サユリはマキの両手をとってそう言った。

「サユリさん・・・。ありがとう・・・」

「当欠の事も一緒に謝るから心配しないで大丈夫!」

サユリはそういって、右手の親指を突き出した。

マキはうつむいていた顔を少し上げ、同じポーズで返した。

「じゃあ、マキちゃん明日電話するね」

「うん。本当にありがとう・・・」 マキは少し涙ぐんでいた。

「水臭いじゃない。もしストーカーがいても私が守ってあげるから

ね。それじゃね。帰りは大丈夫?」

マキは美由紀の事を見て 「うん。今日は多分大丈夫だと思う」

と言った。

「なにかあったらすぐ電話してね。じゃあ、美由紀。お姉ちゃん

に挨拶して」 そう言ってサユリは美由紀の肩に手をかけた。

「お姉ちゃん。またね!バイバイ」 そう言う美由紀にマキは笑顔

で「またね!バイバイ」 と手を振った。

「じゃあね、マキちゃん」

サユリはそう言って美由紀とエスカレーターで降りていった。

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2007年7月23日 (月)

星のお姫さま 30

「あるお客さんに、ストーカーみたいにされちゃって・・・」

「えっ?そうなの?誰?私が知っている人?」

サユリは立て続けに質問をした。

「多分知らない人だと思う・・・。最近来た人で、ぶっちゃけモ

テそうな感じのタイプじゃないし、多分マキに優しくされてその

気になっちゃったんじゃないの?」

風俗を含めた水商売では、客がコンパニオンやホステスに惚

れるというのは日常茶飯事に起こる事だ。

店で働く人間としては、客に嫌われるより好かれたほうが仕事

がやりやすい。その為に、笑顔で接客もするし時には客をその

気にさせるような事を言ったりもする。

その言葉を商売のトークとしてとらえるか、本気ととらえるかは

客次第ということになる。

「そうだったの・・・」 サユリが同情するように言った。

「うん。昨日だって出勤しようと思っていたのに、家を出て駅に

着いたらその客が改札で待っててさ・・・。怖くなって家に戻ろう

としたんだけど、気づかれて家まで着いてこられても嫌だから

そのままタクシーで新宿まで行ったんだ。」

マキが当欠した理由を言った。

「タクシーで店まで着ちゃえばよかったのに」

サユリがそう言うと

「だって、出勤して店に来られても嫌でしょ?」

サユリはピンときた。昨夜、マキを指名したいと電話があった

のを思い出したのだ。サユリが待機室に戻る時に店のボーイ

が「すみません。今日マキさんお休みなんですよ」と断っていた

のを思いだした。

「そんな事があったのか・・・。でも相談くらいしてくれればいい

のに」 サユリは少し悲しいと思いながらそう言った。

「うん。相談しようと思ったけど、自分で蒔いた種だからね。そ

んな事でサユリさんに迷惑かけたくなかったんだよ」

サユリにはマキの優しい気持ちが逆に辛く思えた。

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2007年7月16日 (月)

星のお姫さま 29

「マキちゃん?」

サユリはエスカレーターですれ違う時に言った。

「えっ?サユリさん?」

マキも驚いた表情でサユリを見た。

「マキちゃん。上がった所で待ってて」

「うん」

二人は偶然にも会う事ができた。

サユリは驚きとうれしさが入り混じった、なんとも言えない気持

ちだった。

「ママ、あの人誰?」 美由紀がサユリに聞いた。

「あの人はママのお友達。美由紀、ママお友達と少しお話した

いからちょっといい?」

「うん」

サユリは反対側のエスカレーターに乗って、マキのいるフロア

へ向かった。

マキは、エスカレーターの踊り場にいた。

服装はいつも仕事の時とは違う感じで、あきらかに普段着とい

った感じだ。

「マキちゃん。どうしたの?何かあった?」

サユリの第一声だった。

「ごめんなさい。メールも電話もしなくて・・・」

「そんなのはいいけど。心配したよ」

うつむくマキを見た美由紀が言った。

「こんにちは」

その言葉を聞いたマキが笑顔で 「こんにちは」と返した。

サユリはマキの笑顔を見て少しホッとした。

「マキちゃん。娘の美由紀よ」

紹介された美由紀は軽く会釈をした。

「美由紀。お友達のマキちゃん」

マキは膝を曲げ、美由紀と同じ目線になって、こう言った。

「美由紀ちゃん。ママの事好き?」

すると美由紀は 「うん。大好き」と答えた。

美由紀とマキのやりとりを見たサユリはすごく心が温かくなっ

た気がした。

「ところでマキちゃん。ど~して当欠したの?」

サユリは単刀直入に聞いてみた。

「う~ん・・・。実は・・・」

マキが口を開いた。

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2007年7月 9日 (月)

星のお姫さま 28

この日は晴れていた。

いつも美由紀と会う時は、何かをすると決まっている訳ではな

い。食事をしたり買い物をしたりと普通の事をしている。

いつものように美由紀を迎えに行き、実家の近くのデパートへ

行った。この日は平日の昼と言う事もあってデパートは比較的

に空いていた。

「美由紀、何食べようか?」

「ママは何食べたいの?」

「ママはねぇ~・・・、何でもいいよ」

「美由紀も何でもいいよ」 美由紀が笑顔でそう言った。

こんなありきたりな時間をサユリは大切に感じていた。

離婚した事に後悔はしていないが、何の罪もない美由紀に

辛い思いをさせるのは、心が痛い思いでいっぱいだった。

二人はデパート内のレストランに入った。和・洋・中の揃っ

たレストランだ。

そこで遅めの昼食をとった後、デパートで買い物をした。

サユリは、せめてもの罪滅ぼしの意味で美由紀の欲しい物

は何でも買ってやりたいと思っているのだが、美由紀はあま

り欲しがる事をしない。

自分のしつけが正しかったとは思わないが、子供ながらに今

の環境が理解できているものだとサユリは思っていた。

結局、この日は美由紀の洋服を買っただけで買い物は終わっ

た。

買い物が終わると実家に戻り、夜まで一緒に過ごす。

サユリと美由紀は手をつないで、デパートのエスカレーターに

乗っていた。

その時、反対側のエスカレーターをマキが上がってきた。

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2007年7月 2日 (月)

星のお姫さま 27

次の日、サユリが目をさますと時計は午前10時をまわってい

た。

今日は美由紀と会う約束をしている。

今日だけじゃなく、休みの日は基本的に美由紀に会うように

している。

しかし、サユリにはマキの事が気がかりで仕方なかった。

目をさまして携帯を見ても、マキからメールも着信もなかった

サユリはマキの事を考えながら、出かける準備を始めた。

花梨やももはまだ寝ているようで、起こさないように気を遣い

静かに支度をしている。

サユリは準備が済み、部屋を出てから携帯で美由紀に電話

をかけた。

携帯電話の液晶に“呼び出し中”の文字が出ている。

しばらくすると美由紀が電話に出た。 「もしもし、ママ?」

サユリは少しホッとして

「もしもし、美由紀?おはよう。これから迎えに行くけどいい?

「うん。待ってるね、ママ!早く来てね」

時間にして数十秒の会話でサユリはうれしくなった。

それと同時に“今の生活を早く終わらせないと”と思うのであっ

た。

しかし、どうしてもマキの事が頭から離れない。

美由紀に会いたいけど、マキの事も探したい。

複雑な気持ちでサユリは美由紀に会いに行った。

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2007年6月25日 (月)

星のお姫さま 26

メールはももからのメールだった。

サユリは少しがっかりしてメールを見た。

『お疲れ。これから帰るけど、何か買っていく?』

ももは、このようなメールをサユリや花梨によく送ってくる。

サユリはももへ返信をした。

『ありがと。大丈夫だよ』

「ももちゃんも、仕事終わったみたいね」

そう言いながら、サユリは携帯をテーブルに置いた。

「まったく、のん気ね。ももちゃんは」 花梨が少しふてくされた

感じで言った。

「知らないもん。仕方ないよ」 ももをフォローするようにサユリ

は言った。

サユリにはマキが仕事を休む理由が全く分からなかった。

前の日もいつものように普通に別れたし、何か悩み事がある

話も聞いた事がない。ましてや当欠の日に花梨が新宿で見か

けたなんて・・・。

「サユリちゃ~ん、明日休みでしょ?マキちゃんの家に行って

みれば?」

「ん~。明日も美由紀と会う約束してるんだよね・・・」

「そっか・・・。まぁ電話やメールくらいしたら?」

「そうだね。それくらいはしてみるよ」

さすがに今の深夜の時間に電話をかけるのは気がひける。

“明日電話してみよう”とサユリは思った。

「ちょっと今日は疲れた。先にシャワー浴びていい?」

サユリは花梨にそう言った。

「いいわよ。今日はもう寝たほうがいいわ。明日に備えて」

「ありがと。じゃあ、先に休ませてもらうわ。ももちゃんにもそう

言っておいて」

サユリはシャワーを浴びてから、ベットに入った。

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2007年6月18日 (月)

星のお姫さま 25

サユリは自宅マンションに着いたが、部屋の電気は消えてい

た。

花梨はまだ帰って来ていないようだ。

サユリは鍵を開け、部屋に入った。

タクシーに乗っていた時もマキからのメールも電話も一切な

かった。

花梨が新宿で見たのがマキであれば、サユリはものすごく不

安だった。

仕事で疲れて当欠したくらいならメールの返信くらいあっても

おかしくはないと思うのだが、それすらない。

なにか絶対理由があるとサユリは思った。

ほどなくして花梨が帰ってきた。

「サユリちゃ~ん。早かったね」

「おかえり。タクシーで急いでもらったからね」

花梨もサユリも着替えもせずに、リビングのソファーに座っ

ていた。

「花梨が見たの間違いなくマキちゃんだった?」

「ん~。声かけなかったし、確認したわけじゃないから確実

とは言えないけど多分、そうだったと思うわ」

「花梨が見かけた時間くらいに私メールしてるのよ。なのに

返信ないし。なんか腑に落ちないっていうか・・・」

「確かに元気はなさそうだったけどね」

サユリはマキの事を本当の妹のように可愛がっていたので

本心から心配していた。

その時、サユリの携帯にメールがきた。

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2007年6月11日 (月)

星のお姫さま 24

サユリが待機室に戻るたびに携帯電話を確認しても、マキから

のメールや着信は一切なかった。

サユリは“何かあったのかしら?”と思った。

結局、仕事中にメールの返信すらこないままこの日の仕事は

終わった。

サユリは「お疲れ様でした」とボーイに挨拶をし、店を後にした

いつものように国道まで歩いている途中にもう一回メールを送

ってみた。

『何かあったの?心配だよ。連絡待ってるね』

メールを送信してからほどなくしてタクシーに乗り込んだ。

いつものように「池袋。西武」と行き先を告げ、窓の外を眺めて

いると、サユリの携帯電話が鳴った。

“マキちゃん?”と思ったが、花梨からの電話だった。

サユリは一瞬がっかりして電話に出た。

「もしもし。お疲れ。ど~したの?」

「サユリちゃ~ん!お疲れちん。今、大丈夫?」

「うん。タクシーで帰っている途中だから」

「あのね・・・。余計な事だけど、今日マキちゃん仕事に来てた

?」

サユリは嫌な予感がした。

「今日は休んでたよ。当欠で」 サユリは心の中で“絶対何かあ

る”と思いながらそう言った。

その言葉を聞いた花梨が「やっぱり~。私、マキちゃんっぽい

人新宿で見かけたわよ」

「えっ?本当に?」

「うん。なんか元気ない感じで歩いていたわ。声かけづらかった

もん」

「何時くらい?」

「えっとね~。私が最初の客を見送った後だから・・・10時くらい

かしらね~」

10時と言えば、サユリが最初に店からメールを送った時間とほ

ぼ変わらない。

「花梨!今何処?」

「私もタクシーよ」

「帰ったら詳しく話聞くわ」

「うん。わかった。じゃあ後でね」

サユリは電話を切って「運転手さん、少し急いで下さい」と言

った。

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2007年6月 4日 (月)

星のお姫さま 23

サユリはいつものように、電車に乗っていた。

サユリとマキはいつも遅番で出勤時間が同じなので電車で会

う事がよくあった。

しかし、この日は会わなかったのだ。

サユリは“マキちゃん、違う電車に乗っているんだな”と思って

いた。

サユリは駅に着いていつものように電話をして送迎用の車に

乗って店に着いた。

店に着くとボーイと挨拶をかわし、待機室に向かった。

待機室の入り口に、コンパニオンの出勤を表す札がある。

札には赤い文字でコンパニオンの名前が書いてあり、出勤し

たらその札を裏返す。そうすると黒い文字で同じ名前が書かれ

ていて、ボーイ達や店の全ての人がそれを見れば出欠が分か

るようになっているのだ。

サユリもいつものように札を裏返した。

マキの札は赤い文字のままだった。

“今日は遅いな”と心の中でサユリは思った。

そして、いつものように仕事が始まった。マキの姿はまだ見て

いなかった。

サユリが合間に待機室に戻っても、マキの札は赤い文字のま

まだった。

少し気になったサユリはボーイに「今日マキちゃんは?」と聞い

てみた。

するとボーイは「当欠です」と答えた。

当欠とは当日欠勤の事で、ここ星のお姫さまでは罰金が科せ

られる。

「当欠・・・。なにかあったのかな?」

「さぁ、連絡なしだからわかんないっす」

「そっか・・・」

サユリが知っている限りマキが当欠した話は聞いた事がなか

った。

“今日に限って何故・・・”とサユリは思った。

とりあえずメールだけしてみようと思い、待機中にメールを送

った。

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2007年5月28日 (月)

星のお姫さま 22

ソープランドを含めた風俗店の営業時間はほとんどが深夜0時

までだ。風営法で営業時間が決まっている。

サユリもマキも0時を過ぎ、待機室にいたのでこの日の仕事は

終わりとなった。

「サユリさん。帰ろう」 マキがサユリに言った。

「うん」 サユリも答えた。

二人は身支度をして、いつものようにボーイに挨拶をして店を

出た。

二人が店を出ると、辺りは真っ暗になっていた。どの店も看板

を消して店じまいをしていた。

「なんかさ、いつもの事だけどこの風景って寂しいよね」 マキ

がつぶやくように言った。

「そうだね。でも私は見慣れたよ」 サユリはそう答えた。

サユリは本音を言えば見慣れたくなんてなかった。できるだけ

短い期間で風俗の仕事から足を洗いたかったのだ。

ダラダラと過ごしていた訳ではない。ただ、ももや花梨、マキの

おかげで、今の環境が思っていたほど嫌いではなかった。

「マキちゃん、明日も出勤だよね?」

「うん」

「じゃあ、また明日ね。おやすみ」

「は~い。また明日ね!おやすみなさい」

二人は店の前で別れて別々の方向へ歩いていった。

サユリはいつものように国道まで歩いてタクシーを拾って帰っ

た。

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2007年5月21日 (月)

星のお姫さま 21

「ありがとうございました」とサユリは客を出口で見送った。

跪いて、お辞儀をする。星のお姫さまのしきたりだ。

客がドアを出たのを確認して、サユリは顔をあげた。

「ふっー」とため息をついた。

見送った後のため息は、もうクセのようなものだ。

仕事が嫌だとかそういった感じではなかった。

環境には慣れるとはいうが、サユリはその事を肌身で感じて

いた。

ため息をつくたびに“最初は裸になるのも嫌だったのにな”と

思うのであった。

見送りが終わるとコンパニオンの待機室に戻る。

戻る途中にボーイが声をかけると次の予約があるのだが、

その日は声をかけられなかった。

待機室に戻ると、待機中のコンパニオンが3人いた。

テレビを観たり、雑誌を読んだり、仮眠したり・・・過ごし方は

コンパニオンによって違う。

サユリは待機の時によく携帯をいじっていた。

娘、美由紀からのメールの確認をするためだ。

接客中は携帯を見る訳にはいかないので待機中に確認を

するのが、クセになっていた。

美由紀からのメールがなければサユリからメールをする。

これといった事がなくても必ず一日一回はメールをしていた。

その日はメールの着信はなかった。

美由紀から着信があってもなくても、うれしさと悲しさが入り

混じる。

「サユリさ~ん、お疲れ」とマキが笑顔で待機室に入ってきた。

「お疲れ様」とサユリも返事をした。

マキの笑顔には本当に元気付けられると思うサユリだった。

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2007年5月14日 (月)

星のお姫さま⑳

「出会いはこんな感じだったなぁ~」

花梨のタバコが半分位になっていた。

「へぇ~。そんな事があって今に至っているんだ」

マキはサユリの過去を知る事ができて、少しうれしかった。

サユリとももは、当時の事を懐かしんでいた。

サユリはこの事がきっかけで、ビアド・プリンセスに通うように

なり、今では3人で暮らすほど仲良くなったのだ。

「あの時ここでお互いに知り合わなかったら、今頃何処で何し

ていたんだろうね?」

ももがサユリに言った。

「私は偶然だったけど、ママに見つからなかったらここにはい

なかったかもしれないし」

「あら~、私のせい?」 ママの麗がサユリの背後からそう言っ

た。

「ママのせいじゃないし、逆に今は見つけてくれてよかったと思

っているよ」 

サユリは本心でそう思っていた。

離婚して風俗で働きだして、世の中の全てが信じられないと思

っていた矢先に自分が信用できる人間に出会えた事に感謝し

ている。

しばらくして「そろそろ帰ろうか?」とももが言った。

「そうだね。マキちゃんはタクシーで帰る?」 サユリがマキに聞

いた。

「うん。そうする。ね!サユリさん!」

「何?」

「またここに連れてきてよ!すごく楽しくて気にいっちゃった」

「いいよ!いつでも。もうマキちゃんが一人できても平気よ」

サユリが花梨を見ながらそう言うと、花梨も軽くうなずいた。

「今度は一人でいらっしゃいよ。サユリちゃ~んの話もっと聞

かせてあげるから」

「花梨!余計な事は言わないでね!」

「はい。はい」 

そんな花梨とサユリのやりとりの最中にももが

「じゃあ、帰ろう」とその場を仕切った。

サユリとももとマキの3人が階段を登って外に出た。

「サユリさん、本当に楽しかったよ。ももさんもありがとうござい

ました」 マキがサユリとももに言った。

「また、一緒に飲もうね」 ももが言うとサユリが

「マキちゃん、気を付けてね。また明日・・・っていうか今日か」

「うん。おやすみなさい」 マキがいつもサユリと別れる時の笑

顔で手を振った。

サユリともももマキに手を振って返した。

マキの姿を見送った後に、サユリとももも家路についた。

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2007年5月 7日 (月)

星のお姫さま⑲

「ど~したの?ももちゃん」

いきなり泣きだしたももに、花梨もビックリした様子だった。

「いいの!ほっといて!」

サユリが初めてももの声を聞いた。

「あなたねぇ~、カウンターでこんな若い子が一人で泣いてい

るのを見過ごす訳にはいかないでしょ?」

花梨も必死だ。

「ゴメンね。サユリちゃ~ん」

花梨がサユリの事を“サユリちゃ~ん”と呼ぶのはこの頃か

ら変わっていない。

「いいの。気にしないで」 花梨に気をつかわせないように、

サユリが言った。

花梨も初めて来たサユリに気をつかわせないように、ももを

なだめ続けていた。

カウンターの状況をボックスから見ていた麗も、ももの側に

来て言った。

「ももちゃん、ここはね泣く所じゃないのよ。楽しくお酒を飲む

場所なの。それが守れないならお代はいらないから帰ってち

ょうだい」 

サユリは麗の厳しさを見た気がした。

人は誰でも悲しい事を抱えているもの。でもここではそんな気

持ちを忘れてほしい。

麗の口癖だ。

常連のももには麗の言葉の意味がすぐに分かった。

「ゴメンね。ママ、花梨」

ももが顔を上げた。

「さぁ、もう一度乾杯しましょ!サユリちゃ~んも一緒に」

花梨が音頭をとって、サユリとももと花梨の3人で乾杯をした。

「かんぱ~い!」

3人が初めて乾杯した瞬間だ。

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2007年4月30日 (月)

星のお姫さま⑱

サユリは初めて来た店なのに、すっかりと馴染んだ自分がいる

事に気がついた。

麗と花梨の気さくな性格のおかげかもしれない。

カウンターでゆっくりとビールを飲みながら、花梨と色々な事を

しゃべっていた。

しばらくすると店のドアが開いた。

前髪を濡らしながら、若い女性が入ってきた。

「あら、ももちゃんいらっしゃい」 花梨がそう声をかけた。

サユリと花梨とももが初めて会った瞬間だ。

「ど~したの?ももちゃん。元気ないわね」

花梨の問いかけに全く反応がない。

無視というよりは、耳に言葉が届いていない感じだった。

ももはサユリの隣へ座った。

「はい。お疲れ様」

そういって花梨は、ウイスキーの水割りを差し出した。

ももはビアド・プリンセスの常連で麗や花梨、他のホステスも

皆知っている。

ももは店に入って一言も話さないで、水割りに口をつけた。

サユリは、ももと呼ばれている若い女性がここの常連である

事はすぐに分かったが、今のテンションが普段どおりなのか

否かは分からなかった。

花梨もいつもと違うももの様子に、ただ見守るしかなかった。

ももは水割りのグラスを半分位飲んで、タバコに火をつけた。

そして、いきなり泣きだした。

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2007年4月23日 (月)

星のお姫さま⑰

「は~い!一名様ごあんな~い」」 麗の声が店内に響いた。

サユリが店内を見渡すと男性と女性のカップルが多い事に気

づいた。

明らかに、飲み屋で働く女とそこの客と言った感じだ。

だが、サユリはなぜかホッとした気持ちになった。

店内の雰囲気からオカマバーである事には間違いないのだ

が、笑い声であふれている店内に気持ちが緩んだ気がした。

サユリはカウンターに座った。

「何飲む?」 カウンター越しにいたオカマが声をかけてきた。

「えっと~、ビール下さい」 別にビールが飲みたかった訳では

ない。咄嗟にでた言葉だった。

瓶ビールの栓を抜いて、グラスを差し出されお酌された。

「お疲れ様。あなた仕事帰りでしょ?」とそのオカマは言ってき

た。

「はい。何で分かるんですか?」 サユリは不思議そうに尋ね

た。

「伊達にここで仕事してないわよ。パッと見れば分かるわ」

「ふ~ん。凄いですね。私なんか全然分からないですよ」

「まぁ、ここでは仕事の事は忘れて楽しく飲みましょう!」

そのオカマは自分のグラスを持ってきて、サユリの目の前に突

き出した。

「喉渇いたなぁ~」とオカマが催促してきた。

サユリは思わず笑ってしまった。

「なんだ!笑えるじゃない」

そうオカマに言われた瞬間、全てを見透かされているように

思えた。

そのオカマこそ花梨だった。

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2007年4月16日 (月)

星のお姫さま⑯

大雨の日だった。

サユリは離婚をして、娘 美由紀の為にソープランドで働きだし

た初日だった。

サユリは当時、歌舞伎町のソープランドで働きだしたのだ。

それなりに決心をして飛び込んだ風俗の世界だったが、想像

以上に過酷な仕事だった。

その日に初めて会った人の前で裸になるのはもの凄くパワー

を使う事だと初めて知った。

仕事中は流石に泣きはしなかったが、仕事が終わって家路に

つくと自然と涙がこぼれてきた。

“なんでこんな事しなくちゃいけないんだろう?”

傘を差しても濡れてしまうほどの大雨の中を一人で歩いていた

ふとサユリが顔を上げると、煌びやかなネオンだが何処となく

不気味な感じの看板が目に入ってきた。

それがビアド プリンセスの看板だとはその時は知らなかった。

その看板の不思議な感じにしばらく心を奪われた様に、その場

に立ち止まった。

看板の脇の地下階段から人の気配を感じた。

着物を着た、文金高島田の人が現れた。

「ひどい雨ねぇ~」

明らかに男の声だと分かるトーンだった。

サユリはビックリして身体が一瞬震えた。

そんなサユリを見た文金高島田の人は「よかったらどうぞ!

そんな所に立っていると風邪ひくわよ」と声をかけてきた。

次の瞬間、導かれるように地下階段へ足が向いた。

サユリはこの時、全く不快な感じがしなかったのだ。

サユリはその文金高島田の人と一緒に階段を下りて行った。

文金高島田の人こそ、ビアド プリンセスのママ麗だった。

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2007年4月 9日 (月)

星のお姫さま⑮

サユリ、もも、花梨の3人は本当に仲が良い。

それはマキにもすぐに分かった。

サユリが店では決して見せない笑顔で皆と話している。

福島から上京してきたマキにとって、こんなに羨ましい事は

なかった。

しばらくすると注文したキムチ鍋がでてきた。

「さぁ~召し上がれ!」 花梨が得意顔で言う。

「うわぁ~マジ美味そう!!」 鍋を見たマキが言った。

寒い夜に暖かい鍋は最高の御馳走だ。

サユリ達に混ざって花梨も仕事をそっちのけで一緒に食べ始

めた。

それから何杯もお酒を飲み、食べ物を食べて皆がいい気分に

なってきた。花梨もいつものように酔っている。

そんな花梨にマキが言った。

「皆はどうして知り合ったの?」

その言葉を聞いた花梨はタバコに火をつけながら話だした。

「そうだなぁ~。もう何年になるだろう?この関係は・・・。たし

か大雨が降っていた日だったな・・・」

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2007年4月 2日 (月)

星のお姫さま⑭

サユリ達は店の扉を開けた。

すると「いらっしゃ~い!」と威勢のいい声が聞こえてきた。

花梨が働くビアド プリンセスは、新宿2丁目でも人気のある店

だ。深夜1時を過ぎても店内は客で賑わっていた。

ワンピースの白いドレスを身にまとったホステスがサユリを見

て「あら~お久しぶりね!元気だった?」と声をかけてきた。

「元気よ。なかなか顔だせなくてごめんね。ママ」

ワンピースの女性は、ビアド プリンセスのママ、麗だ。

麗が「ももちゃんも来てるわよ。ほら、あそこ」と指をさした。

指の先を見ると、ももと花梨が話をしている。 

「花梨ちゃん!サユリちゃん来たわよ」と麗が花梨に言った。

「サユリちゃ~ん!お疲れ」

いつものテンションで花梨が言った。

「花梨もお疲れ様」 サユリはホッとした気持ちを感じた。

「サユリちゃ~ん、お友達?」

マキを見た花梨がサユリに聞いた。

「そうよ。マキちゃんって言うの。連れてきちゃった」

「すみません・・・。なんか・・・」マキが申し訳なさそうに言う。

「いいのよ!仲間は多いのに越した事ないし。さ、乾杯しま

しょ」と言いながら花梨がグラスを用意した。

「じゃあ、マキちゃんこれからもよろしくね。かんぱ~い」

花梨の音頭でサユリ達はグラスを合わせた。

「マキちゃん、お腹すいてない?」とサユリがマキに聞いた。

「うん、少し減ってるかな」お腹を押さえながらマキが言った。

「花梨の料理マジうまいよ」とももがマキに言った。

「へぇ~。オススメは何かあるの?」

「キムチ鍋。絶品だよ!」ももが隣のテーブルに置かれてい

る鍋を指差した。

それを見たマキが鍋を頼もうと思った瞬間に

「キムチ鍋、ちょうだい」とサユリが花梨に言った。

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2007年3月26日 (月)

星のお姫さま⑬

二人はタクシーを拾って新宿へ向かった。

サユリはタクシーの中から、ももへメールを送った。するともも

からすぐさま電話がかかってきた。ももはすでに花梨の店に居

るらしい。

「すぐ着くから。うん、じゃあね!」 サユリは電話を切った。

「サユリさん。私行って大丈夫?お友達と約束なんじゃないの

?」 マキが心配そうに聞いた。

「大丈夫よ。約束じゃないし、私の友達をマキちゃんに紹介した

いし、新年会もやってないじゃん」

「そっか!なんだかんだ言ってやってなかったね」

「そうそう!二人じゃないけど、新年会やろうよ」

しばらくしてタクシーは新宿に着いた。

花梨の働く店は新宿2丁目にある。オカマバーの激戦区だ。

二人はタクシーを降りた。

「ここ。ここ」 サユリは指を差した。

“BEARD PRINCESS” ビアド プリンセス。

あご髭の王女と言う意味の店だ。入り口は地下に降りる階段に

なっている。

サユリとマキは階段を降りていった。

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2007年3月19日 (月)

星のお姫さま⑫

サユリの一日が終わった。今日も何事もなく普通に終わる事が

できた。

サユリが帰り支度をしながら携帯を見るとメール受信があった。

メールを開くとももからのメールだった。

『今日、花梨のトコ行くから一緒にどう?』

と書かれていた。

「サユリさん。どうしたの?嫌なメール?」とマキが声をかけた。

「ううん。そうじゃないよ」 サユリが首を振った。

「マキなんかメール一件もないよ・・・。こんなケータイ捨てようか

な」と少しふてくされて言った。

「あはははは」 サユリは思わず笑ってしまった。

店のネオンも消えて、コンパニオン達がぞくぞくと帰って帰って

行く。

「マキちゃん。今日これからヒマ?」とサユリがマキに聞いた。

「ヒマだよ・・・。帰るだけもん」

「ちょっと寄り道していかない?」

「いいよ!何処行くの?」

「新宿2丁目。友達が働いているオカマバー」

「行く。行く。楽しそう!!」 マキが満面の笑みで言った。

「よし!キマリ!じゃあ行こう!」 

サユリとマキは二人で一緒に店を出た。

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2007年3月12日 (月)

星のお姫さま⑪

「サユリさん。お願いします」とボーイが待合室にいるサユリに

声をかけた。

「はい。今行きます」

「サユリさん」とマキが言いながら、右手の親指を突き出した。

サユリも同じポーズをとって無言で返事をする。

サユリとマキ、二人だけの挨拶だ。

ホステスの待合室は店の地下にある。ホステスは階段を上が

ってきて、お客の待合室のある1階の踊り場でお客と顔を合わ

すのだ。そして階段でさらに上へ上がり、部屋まで一緒にいく

のである。

柴田と名乗る客はサユリの常連客の一人だ。

年齢は自称43歳。結婚もしていて子供もいるらしい。

しかしサユリにとっては、それが嘘でも本当でも仕事をする上

で問題ではない。それよりもお客が楽しんでもらう事と自分が

嫌な思いをしない事の方が大事な事なのだ。

この柴田と言う客はサユリにとって、その大事な事を満たせる

客の一人だ。

「柴田さん、久しぶり。元気だった?」

「ああ、元気だったよ。今日はカミさんが実家に帰っているから

来てしまったよ」と柴田と名乗る客は照れくさそうに言った。

そんな挨拶を交わして、サユリと柴田は部屋に入っていった。

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2007年3月 5日 (月)

星のお姫さま⑩

駅に到着した二人は、店に電話をした。出勤時は駅まで迎えに

来てくれるのだ。

吉原はソープランドの激戦区なので、各ソープランドでお客の送

迎をサービスでやっている店が多いのだ。

お客は最寄り駅から電話して迎えに来てもらうのである。

サユリ達の出勤時もそのお客用の送迎車を利用して迎えにき

てもらうのであった。

いつものように迎えに来てもらい、いつもと変わらない普通の日

だった。

サユリ達が店に着くと、ボーイが「おはようございます」と挨拶を

してきた。

「おはようございます」と二人も返事をする。本当にいつもと変わ

らない日だった。

「サユリさん、今日予約入っていますよ。5時から」と予約の電

話をとっているボーイから言われた。

ソープランドでは人気のあるホステスは予約が入る事が多い。

サユリも予約される人気ホステスの一人だった。

ここ“星のお姫さま”では予約の入るホステスじゃないとフリー

の客はつけてもらえない。店からすれば予約されるホステスく

らいじゃないとフリーの客に喜んでもらえない、という考えだ。

「5時?時間ないわね。ね、名前は?」 サユリは確認をした。

「シバタ様、という方ですが」

「柴田さんか。ありがと」

ソープランドで予約をする場合、名前を名乗らなければならな

い。しかし、本名かどうかの確認などは一切しない。お客によっ

ては、あきらかに偽名と思われる名前を言う人もいる。サユリ

達ホステスは予約時の名前を覚えておいて、顔と名前を一致

させるのだ。

「柴田さん。久しぶりだな」 と独り言をつぶやいて、サユリは

仕事の準備を始めた。

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2007年2月26日 (月)

星のお姫さま⑨

マキは、サユリの後輩にあたる。

入店当時からサユリの事を姉さんのように慕っているのだ。

マキは元々ヘルスで働いていた。

マキにもサユリのように風俗で働く目的があった。

それは自分の店を持つという事。

自分が大好きなネイルサロンを持ちたいという夢をもって

福島から上京してきたのだ。

お金を貯めたいが、OLでは何年かかるか分からない。

短期で多く稼ぐ為に、風俗の世界に飛び込んだ。

とはいうもの、風俗のイロハも知らないマキにとって風俗は

未知の世界。自分なりに色々調べてヘルスで働く事を決めた

のだ。

しかしヘルスとは名ばかりで、本番行為を店が強要していた。

風営法では、あらゆる風俗において本番行為は禁止されてい

る。にも関らず、店の売り上げの為に「本番をやって客を引き

付けろ」と言われていた。

風俗界の事を知らないマキにとって、それが当たり前だと思っ

ていた。

正直マキもヘルスで本番行為をやっていた。しかし店はヘルス

だったので、シャワールームしかなく衛生面で不安だった。

マキが直接、お客の身体を洗えない狭いシャワールームしか

ない店だった。

結局、三ヶ月でヘルスを辞めてしまった。

しかしヘルスでの本番行為のおかげでマキの中に一つの境界

線を引いた。“本番行為の方がお金になる”と。

そして行きついたのがソープランドだった。

数あるソープランドの中から“星のお姫さま”を選んだのは単

なる偶然。

マキの入店初日、色々教えてくれたのがサユリだった。

それ以来マキはサユリを慕うようになったのだ。

サユリもマキを可愛がっていた。

なんとなく憎めないキャラのマキに愛情にも似た感覚を抱いて

いた。きっとマキがサユリを信頼しているのがサユリ自身にも

感じる事ができたからだ。

二人を乗せた電車は鶯谷駅に到着した。

「サユリさん。今日もお互いがんばろ~ね」

そういうマキの笑顔を言葉にサユリはいつも元気づけられる。

「うん。がんばろ~ね」

サユリもマキに笑顔で返した。

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2007年2月19日 (月)

星のお姫さま⑧

サユリは電車に乗っていた。

サユリは遅番の出勤の為、電車に乗るのは15時頃だった。

数多い風俗の中でソープランドを選んだのは、衛生面が一番

しっかりしていそうだったのでサユリはソープ嬢をやっている。

サユリの働いている店“星のお姫様”では月一回のHIVの検

査をやっていて、陽性の場合は店をクビになってしまうのだ。

そんなリスクを犯してでも、サユリには風俗で働く理由がある。

全ては娘の美由紀の為だ。

別れた夫からは一切の慰謝料を拒否した。

慰謝料に縛られて、関係を保つのが嫌だったのである。

別れた理由が夫によるDVのせいもあって顔も見たくなかっ

た。

しかし、娘には両親が離婚した事で嫌な思いをさせたくない。

その為に1千万円貯めるという目標を立てて、この世界に踏

み込んだのだった。

その目標にももうすぐ手が届きそうな位になっていた。

電車から窓の外の景色を見ていると、色々な事を思い出す。

今までの事やこれからの事・・・。

サユリは深いため息をついた。

その時、後ろから肩を叩かれた。

「おはようございます」

サユリと一緒に働いているマキだった。

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2007年2月12日 (月)

星のお姫さま⑦

「ママ、ありがとう!楽しかったよ。またね」

美由紀と実家の前で別れる時に、こんな事を言われた。

せめて正月くらい一緒にいてやりたいのだが、サユリの仕事

は年中無休の仕事だ。

サユリはマンションに戻った。花梨とももがテレビを観ていた。

サユリはこのマンションに戻って花梨やももと会うと、不思議

と元気になるのだ。

「おかえり、サユリさん。楽しかった?」とももが笑顔で言った。

「うん。楽しかったよ。ありがとね!ももちゃん」

「何?何?この雰囲気?」 花梨が口を挟む。

「なんでもないよ!ももちゃんにお年玉もらったの」

「え~~~~!私にもちょうだいよ~~」とオカマバーで働い

ている時と同じテンションで花梨がももにねだった。

「あははは。なんかこの感じ久しぶりだね」とももが言った。

この3人は花梨が働いているオカマバーで知り合って今に

至っている。

「本当に昨日の事のように思い出すね。あの日の事」

サユリも懐かしんでいた。

「そうよね・・・。あんた達は、男運ないからね」と花梨が皮肉

った。

その言葉を聞いた2人が声をそろえて言った。

「うるさ~い!」

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2007年2月 5日 (月)

星のお姫さま⑥

サユリが美由紀と神社に着くと、初詣の人で賑わっていた。

初詣は実家側の神社に行くのだが、この神社がいつも初詣の

参拝者ランキングで上位に入るくらいの人気の神社だった。

しかし、サユリは毎年来ている。これは風俗で働く前から変わ

っていない。

「ママ、すごい人だね」

「はぐれちゃダメよ。ママにちゃんと摑まって」

人の波に逆らう事なく進んで行き、本堂までたどり着いた。

サユリは美由紀に小銭を渡して「力一杯投げるのよ。そして

願い事をお願いするの」と言った。

「うん。分かった」と美由紀は小さい手でサユリの渡した小銭

を握り締めた。

二人で一緒にお賽銭箱めがけてお賽銭を投げた。

サユリは静かに手を合わせ“今年で今の仕事が終わる事が

できますように”と祈りを捧げた。

隣で美由紀は「ママと一緒に過ごせますように」と声を

出してお祈りをした。

その言葉を聞いたサユリは涙が出そうな位うれしかった。

涙を精一杯こらえて「大丈夫。すぐに一緒に暮らせるから」と

美由紀を抱きかかえて言った。

しばらく境内を散歩して、昼食をとった。

ももから貰ったしわくちゃな1万円札を見て、サユリはまた泣

きそうになった。

「おかあさん、どうしたの?」と美由紀が心配そうに言う。

「なんでもないよ」と平然を装うのが精一杯だった。

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2007年1月29日 (月)

星のお姫さま⑤

1月1日は快晴だった。

サユリが時計を見ると、午前10時を回ったところだった。

昨夜、キムチ鍋を食べてシャワーを浴びて寝たのが、午前4

時だった。6時間寝れば、体調はそんなに悪くはない。

サユリは携帯電話で、実家に電話をした。

「もしもし、おかあさん?あけましておめでとう。美由紀起きて

る?」

美由紀とはサユリにとって何にも変えがたい宝物のような我

が子だ。母親によると、お正月という雰囲気に興奮してしまい

昨夜はなかなか寝つけなかったという。

「美由紀に替わって」 サユリは母親に告げた。

「・・・・もしもし。ママ?」

「美由紀!あけましておめでとう」

「おめでとう!ママ」

「美由紀。これからママおばあちゃんの家に行くから、お出かけ

しよう」

「やった~!待ってるね!ママ」

「うん。待っててね。すぐ行くから」 サユリは電話を切った。

電話をかけるたびに不安と期待が入り混じる。「ママなんか嫌

い」と言われるか「ママありがとう」と言われるか。

今日はとりあえずホッして、出かける準備を始めた。

化粧をして、クローゼットからコートを取り出した。花梨はまだ

熟睡しているようだ。

ガチャ。玄関が開く音がした。

リビングから廊下を覗くと、キャバ嬢のももが帰ってきた。

「ももちゃん、随分遅かったね。あけましておめでとう」

「あけおめ!もうまいったよ」 ももは深いため息をついた。

「いままでアフター?」

「そうだよ。店でカウントダウンやって、そのままお参り。もう

まいっちゃった・・・」

ももの雰囲気から、疲れているのは誰が見ても分かる。

「ゆっくり休んで。私は今から娘に会ってくる」

「ちょっと待って。はい、これ」と言ってももは1万円札をだした。

「何?これ?」サユリは全く意味が分からないと言った感じだ

った。

「美由紀ちゃんにお年玉」

「いいって!ももちゃんからお年玉貰う意味が分からないよ」

「いいよ!気にしないで。ぶっちゃけこれ客から貰ったお年玉

だから」

「気持ちだけ貰うよ。ありがとう」 

「じゃあさ、これサユリさんにあげる。これで美由紀ちゃんと美

味しいものでも食べてよ。今年で最後かもしれないしさ」

サユリはももには今年で今の生活を辞めて、美由紀と一緒に

住む事を考えている事を話してあったのだ。

「ももちゃん・・・。ありがと」

「早く行ってあげな!美由紀ちゃん待っているんでしょ?」

花梨といい、ももといい本当にいい仲間にめぐり合えたと実感

した。

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2007年1月22日 (月)

星のお姫さま④

「花梨のキムチ鍋って本当に美味しいね」

サユリは鍋に舌鼓を打っていた。

「サユリちゃ~んは明日、どうするの?」

「明日は実家に行って子供と初詣でも行こうかな?って思って

るよ」

「そうだよね。一応ママだもんね」 花梨がちょっと皮肉っぽく言

った。

「なによ!一応って」サユリも少し怒った感じで返事を返した。

「冗談よ!サユリちゃ~んが子供の事を愛しているのは、誰よ

りもアタシが知っているわ」

「私も知っているわ。花梨が毎日髭を剃っているのを」

「も~。サユリちゃ~んったら。その事は言わないで」

「ゴメン。ゴメン」

こんな何気ない会話のやりとりがサユリにとって心地いいので

ある。普段店で働いていると絶対に得る事のできない気持ち

だ。

「美味しかったわ。ごちそうさま。シャワー浴びるね」

サユリはシャワーを浴びながら思った。“この生活も今年限りか

な?”と。

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2007年1月15日 (月)

星のお姫さま③

サユリには、子供がいる。が、夫はいない。いわゆるバツの女

性である。子供は実家に預けていた。

ソープ嬢の出勤形態は2勤1休。2日働いて1日休むという形

態だ。そのほかに月に一度、生理休暇が与えられる。

サユリは休みの日以外は子供と会っていない。子供には「仕

事が忙しいから、おばあちゃんと一緒にいてね」と言ってある。

幸いサユリの子供は、おばあちゃんが大好きなので今の所た

いした問題にはなっていない。

実家の母も、元風俗嬢のせいかサユリに対して理解していた。

サユリの部屋には子供の写真が飾ってある。帰宅すると必ず

写真を見て“ただいま”と心の中でつぶやくのである。

「サユリちゃ~ん。お腹すいてる?」

花梨はいつもサユリを呼ぶ時に、“ちゃ~ん”と声を伸ばして呼

ぶ。

「店で食べてきたから」とサユリが言うと、花梨は悲しそうな顔を

して「花梨特製のキムチ鍋作ったのに~」と言った。

花梨はオカマだが、料理は上手だった。自分が本物の女じゃな

いからせめて料理くらいは女より上手に作りたいと言うのが、彼

女の口癖である。

「マジ?キムチ鍋?食べる!食べる!」

サユリは花梨の作るキムチ鍋が大好きだった。

「これは花梨流のおせち料理よ。あけましておめでとう」

“そっか年明けたから、世間はお正月だった”と改めて思うサユ

リだった。

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2007年1月 8日 (月)

星のお姫さま②

東京都台東区千束3丁目。一般的に“吉原”と呼ばれるこの場

所にサユリの働いているソープランドはある。

サユリは仕事が終わると、いつもタクシーで帰宅していた。

終電もギリギリ走っている時間に終わるのだが、心身共にク

タクタの身体に電車はキツい。

「お疲れ様でした。また明日」とマキが手を振っている。

サユリも軽く手を振り「お疲れさま」と言った。

サユリは国道まで歩いてタクシーを乗るようにしている。

この国道まで歩く時間が、“ソープ嬢”から“自分”に戻れるよ

うな気がしていた。

いつものようにタクシーに乗って「池袋、西武」と行き先を告げ

た。

「いつもお疲れ様。大変だねぇ~」とタクシーの運転手がサユ

リに声をかけた。場所と時間帯と風貌でソープ嬢というのが分

かるらしい。

そんな言葉を聞くたびにサユリは虫唾が走る思いにかられる

のであった。

店で聞けばなんの変哲もない言葉でも、“自分”に戻ってから

言われるとムカッとする。しかしサユリは、そんな言葉を聞くた

びに“心まで風俗に染まっていない”と確認するのだ。

しばらくするとタクシーは池袋に到着し、サユリは西武の前か

ら歩いて自宅である賃貸マンションに帰った。

マンションのエントランスを抜けて玄関の前にさしかかると、部

屋の電気が点いていた。サユリが玄関を開けると

「おかえり~!サユリちゃ~ん!」と髭の剃り後がある女性らし

き人物が声をかける。

「ただいま。花梨。ももちゃんは、まだ?」

「まだねぇ~。アフターかしら?」

サユリは自宅マンションを3人で借りている。

ソープ嬢のサユリ。キャバ嬢のもも。オカマの花梨。

今のサユリにとって、自分の子供以外で心を許せる数少ない

友人達だ。

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2007年1月 1日 (月)

星のお姫さま①

「あけましておめでとうございます」

午前0時を過ぎた途端に、テレビが一斉にこの言葉を言い出

した。

「あけおめ!ことよろ!」 マキが言った。

「おめでとう。今年もよろしくね」 サユリが返事をする。

もう何度の年越しをここで過ごしたのだろう。サユリはフーッと

ため息をついた。しばらくすると店長が部屋に訪れて「おめで

とう。お疲れ。あがっていいぞ」とサユリとマキに声をかけた。

サユリは着替えを始めて、帰り支度をした。

「サユリさん。今日フリーいた?」

「今日は指名ばっかだね。年末だったし、知らない人はあんま

り来ないでしょ」

「だよね~。マキも常連ばっか。いつものお爺ちゃんも来たし」

「あの人マキちゃんの事大好きだね」

「こういうトコじゃないと相手してもらえないんでしょ。まぁいい人

だしマキも助かるけどね。そうだ!サユリさん」

「何?」

「まっすぐ帰る?」

「今日は帰ろうかな。明日実家行かないと」

「子供いるんだもんね・・・。わかった!今度時間ある時に二人

で新年会やろうよ!」

「二人で?いいよ!」

「じゃキマリね!」

二人は着替えを終えて、店を後にした。

雪は降っていないが寒さが肌に突き刺さるような寒い夜だった

。店のネオンも消えている。

“ソープランド 星のお姫さま” ここが二人が働いている場所

である。

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