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2007年5月28日 (月)

星のお姫さま 22

ソープランドを含めた風俗店の営業時間はほとんどが深夜0時

までだ。風営法で営業時間が決まっている。

サユリもマキも0時を過ぎ、待機室にいたのでこの日の仕事は

終わりとなった。

「サユリさん。帰ろう」 マキがサユリに言った。

「うん」 サユリも答えた。

二人は身支度をして、いつものようにボーイに挨拶をして店を

出た。

二人が店を出ると、辺りは真っ暗になっていた。どの店も看板

を消して店じまいをしていた。

「なんかさ、いつもの事だけどこの風景って寂しいよね」 マキ

がつぶやくように言った。

「そうだね。でも私は見慣れたよ」 サユリはそう答えた。

サユリは本音を言えば見慣れたくなんてなかった。できるだけ

短い期間で風俗の仕事から足を洗いたかったのだ。

ダラダラと過ごしていた訳ではない。ただ、ももや花梨、マキの

おかげで、今の環境が思っていたほど嫌いではなかった。

「マキちゃん、明日も出勤だよね?」

「うん」

「じゃあ、また明日ね。おやすみ」

「は~い。また明日ね!おやすみなさい」

二人は店の前で別れて別々の方向へ歩いていった。

サユリはいつものように国道まで歩いてタクシーを拾って帰っ

た。

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2007年5月21日 (月)

星のお姫さま 21

「ありがとうございました」とサユリは客を出口で見送った。

跪いて、お辞儀をする。星のお姫さまのしきたりだ。

客がドアを出たのを確認して、サユリは顔をあげた。

「ふっー」とため息をついた。

見送った後のため息は、もうクセのようなものだ。

仕事が嫌だとかそういった感じではなかった。

環境には慣れるとはいうが、サユリはその事を肌身で感じて

いた。

ため息をつくたびに“最初は裸になるのも嫌だったのにな”と

思うのであった。

見送りが終わるとコンパニオンの待機室に戻る。

戻る途中にボーイが声をかけると次の予約があるのだが、

その日は声をかけられなかった。

待機室に戻ると、待機中のコンパニオンが3人いた。

テレビを観たり、雑誌を読んだり、仮眠したり・・・過ごし方は

コンパニオンによって違う。

サユリは待機の時によく携帯をいじっていた。

娘、美由紀からのメールの確認をするためだ。

接客中は携帯を見る訳にはいかないので待機中に確認を

するのが、クセになっていた。

美由紀からのメールがなければサユリからメールをする。

これといった事がなくても必ず一日一回はメールをしていた。

その日はメールの着信はなかった。

美由紀から着信があってもなくても、うれしさと悲しさが入り

混じる。

「サユリさ~ん、お疲れ」とマキが笑顔で待機室に入ってきた。

「お疲れ様」とサユリも返事をした。

マキの笑顔には本当に元気付けられると思うサユリだった。

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2007年5月14日 (月)

星のお姫さま⑳

「出会いはこんな感じだったなぁ~」

花梨のタバコが半分位になっていた。

「へぇ~。そんな事があって今に至っているんだ」

マキはサユリの過去を知る事ができて、少しうれしかった。

サユリとももは、当時の事を懐かしんでいた。

サユリはこの事がきっかけで、ビアド・プリンセスに通うように

なり、今では3人で暮らすほど仲良くなったのだ。

「あの時ここでお互いに知り合わなかったら、今頃何処で何し

ていたんだろうね?」

ももがサユリに言った。

「私は偶然だったけど、ママに見つからなかったらここにはい

なかったかもしれないし」

「あら~、私のせい?」 ママの麗がサユリの背後からそう言っ

た。

「ママのせいじゃないし、逆に今は見つけてくれてよかったと思

っているよ」 

サユリは本心でそう思っていた。

離婚して風俗で働きだして、世の中の全てが信じられないと思

っていた矢先に自分が信用できる人間に出会えた事に感謝し

ている。

しばらくして「そろそろ帰ろうか?」とももが言った。

「そうだね。マキちゃんはタクシーで帰る?」 サユリがマキに聞

いた。

「うん。そうする。ね!サユリさん!」

「何?」

「またここに連れてきてよ!すごく楽しくて気にいっちゃった」

「いいよ!いつでも。もうマキちゃんが一人できても平気よ」

サユリが花梨を見ながらそう言うと、花梨も軽くうなずいた。

「今度は一人でいらっしゃいよ。サユリちゃ~んの話もっと聞

かせてあげるから」

「花梨!余計な事は言わないでね!」

「はい。はい」 

そんな花梨とサユリのやりとりの最中にももが

「じゃあ、帰ろう」とその場を仕切った。

サユリとももとマキの3人が階段を登って外に出た。

「サユリさん、本当に楽しかったよ。ももさんもありがとうござい

ました」 マキがサユリとももに言った。

「また、一緒に飲もうね」 ももが言うとサユリが

「マキちゃん、気を付けてね。また明日・・・っていうか今日か」

「うん。おやすみなさい」 マキがいつもサユリと別れる時の笑

顔で手を振った。

サユリともももマキに手を振って返した。

マキの姿を見送った後に、サユリとももも家路についた。

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2007年5月 7日 (月)

星のお姫さま⑲

「ど~したの?ももちゃん」

いきなり泣きだしたももに、花梨もビックリした様子だった。

「いいの!ほっといて!」

サユリが初めてももの声を聞いた。

「あなたねぇ~、カウンターでこんな若い子が一人で泣いてい

るのを見過ごす訳にはいかないでしょ?」

花梨も必死だ。

「ゴメンね。サユリちゃ~ん」

花梨がサユリの事を“サユリちゃ~ん”と呼ぶのはこの頃か

ら変わっていない。

「いいの。気にしないで」 花梨に気をつかわせないように、

サユリが言った。

花梨も初めて来たサユリに気をつかわせないように、ももを

なだめ続けていた。

カウンターの状況をボックスから見ていた麗も、ももの側に

来て言った。

「ももちゃん、ここはね泣く所じゃないのよ。楽しくお酒を飲む

場所なの。それが守れないならお代はいらないから帰ってち

ょうだい」 

サユリは麗の厳しさを見た気がした。

人は誰でも悲しい事を抱えているもの。でもここではそんな気

持ちを忘れてほしい。

麗の口癖だ。

常連のももには麗の言葉の意味がすぐに分かった。

「ゴメンね。ママ、花梨」

ももが顔を上げた。

「さぁ、もう一度乾杯しましょ!サユリちゃ~んも一緒に」

花梨が音頭をとって、サユリとももと花梨の3人で乾杯をした。

「かんぱ~い!」

3人が初めて乾杯した瞬間だ。

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