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2007年4月30日 (月)

星のお姫さま⑱

サユリは初めて来た店なのに、すっかりと馴染んだ自分がいる

事に気がついた。

麗と花梨の気さくな性格のおかげかもしれない。

カウンターでゆっくりとビールを飲みながら、花梨と色々な事を

しゃべっていた。

しばらくすると店のドアが開いた。

前髪を濡らしながら、若い女性が入ってきた。

「あら、ももちゃんいらっしゃい」 花梨がそう声をかけた。

サユリと花梨とももが初めて会った瞬間だ。

「ど~したの?ももちゃん。元気ないわね」

花梨の問いかけに全く反応がない。

無視というよりは、耳に言葉が届いていない感じだった。

ももはサユリの隣へ座った。

「はい。お疲れ様」

そういって花梨は、ウイスキーの水割りを差し出した。

ももはビアド・プリンセスの常連で麗や花梨、他のホステスも

皆知っている。

ももは店に入って一言も話さないで、水割りに口をつけた。

サユリは、ももと呼ばれている若い女性がここの常連である

事はすぐに分かったが、今のテンションが普段どおりなのか

否かは分からなかった。

花梨もいつもと違うももの様子に、ただ見守るしかなかった。

ももは水割りのグラスを半分位飲んで、タバコに火をつけた。

そして、いきなり泣きだした。

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2007年4月23日 (月)

星のお姫さま⑰

「は~い!一名様ごあんな~い」」 麗の声が店内に響いた。

サユリが店内を見渡すと男性と女性のカップルが多い事に気

づいた。

明らかに、飲み屋で働く女とそこの客と言った感じだ。

だが、サユリはなぜかホッとした気持ちになった。

店内の雰囲気からオカマバーである事には間違いないのだ

が、笑い声であふれている店内に気持ちが緩んだ気がした。

サユリはカウンターに座った。

「何飲む?」 カウンター越しにいたオカマが声をかけてきた。

「えっと~、ビール下さい」 別にビールが飲みたかった訳では

ない。咄嗟にでた言葉だった。

瓶ビールの栓を抜いて、グラスを差し出されお酌された。

「お疲れ様。あなた仕事帰りでしょ?」とそのオカマは言ってき

た。

「はい。何で分かるんですか?」 サユリは不思議そうに尋ね

た。

「伊達にここで仕事してないわよ。パッと見れば分かるわ」

「ふ~ん。凄いですね。私なんか全然分からないですよ」

「まぁ、ここでは仕事の事は忘れて楽しく飲みましょう!」

そのオカマは自分のグラスを持ってきて、サユリの目の前に突

き出した。

「喉渇いたなぁ~」とオカマが催促してきた。

サユリは思わず笑ってしまった。

「なんだ!笑えるじゃない」

そうオカマに言われた瞬間、全てを見透かされているように

思えた。

そのオカマこそ花梨だった。

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2007年4月16日 (月)

星のお姫さま⑯

大雨の日だった。

サユリは離婚をして、娘 美由紀の為にソープランドで働きだし

た初日だった。

サユリは当時、歌舞伎町のソープランドで働きだしたのだ。

それなりに決心をして飛び込んだ風俗の世界だったが、想像

以上に過酷な仕事だった。

その日に初めて会った人の前で裸になるのはもの凄くパワー

を使う事だと初めて知った。

仕事中は流石に泣きはしなかったが、仕事が終わって家路に

つくと自然と涙がこぼれてきた。

“なんでこんな事しなくちゃいけないんだろう?”

傘を差しても濡れてしまうほどの大雨の中を一人で歩いていた

ふとサユリが顔を上げると、煌びやかなネオンだが何処となく

不気味な感じの看板が目に入ってきた。

それがビアド プリンセスの看板だとはその時は知らなかった。

その看板の不思議な感じにしばらく心を奪われた様に、その場

に立ち止まった。

看板の脇の地下階段から人の気配を感じた。

着物を着た、文金高島田の人が現れた。

「ひどい雨ねぇ~」

明らかに男の声だと分かるトーンだった。

サユリはビックリして身体が一瞬震えた。

そんなサユリを見た文金高島田の人は「よかったらどうぞ!

そんな所に立っていると風邪ひくわよ」と声をかけてきた。

次の瞬間、導かれるように地下階段へ足が向いた。

サユリはこの時、全く不快な感じがしなかったのだ。

サユリはその文金高島田の人と一緒に階段を下りて行った。

文金高島田の人こそ、ビアド プリンセスのママ麗だった。

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2007年4月 9日 (月)

星のお姫さま⑮

サユリ、もも、花梨の3人は本当に仲が良い。

それはマキにもすぐに分かった。

サユリが店では決して見せない笑顔で皆と話している。

福島から上京してきたマキにとって、こんなに羨ましい事は

なかった。

しばらくすると注文したキムチ鍋がでてきた。

「さぁ~召し上がれ!」 花梨が得意顔で言う。

「うわぁ~マジ美味そう!!」 鍋を見たマキが言った。

寒い夜に暖かい鍋は最高の御馳走だ。

サユリ達に混ざって花梨も仕事をそっちのけで一緒に食べ始

めた。

それから何杯もお酒を飲み、食べ物を食べて皆がいい気分に

なってきた。花梨もいつものように酔っている。

そんな花梨にマキが言った。

「皆はどうして知り合ったの?」

その言葉を聞いた花梨はタバコに火をつけながら話だした。

「そうだなぁ~。もう何年になるだろう?この関係は・・・。たし

か大雨が降っていた日だったな・・・」

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2007年4月 2日 (月)

星のお姫さま⑭

サユリ達は店の扉を開けた。

すると「いらっしゃ~い!」と威勢のいい声が聞こえてきた。

花梨が働くビアド プリンセスは、新宿2丁目でも人気のある店

だ。深夜1時を過ぎても店内は客で賑わっていた。

ワンピースの白いドレスを身にまとったホステスがサユリを見

て「あら~お久しぶりね!元気だった?」と声をかけてきた。

「元気よ。なかなか顔だせなくてごめんね。ママ」

ワンピースの女性は、ビアド プリンセスのママ、麗だ。

麗が「ももちゃんも来てるわよ。ほら、あそこ」と指をさした。

指の先を見ると、ももと花梨が話をしている。 

「花梨ちゃん!サユリちゃん来たわよ」と麗が花梨に言った。

「サユリちゃ~ん!お疲れ」

いつものテンションで花梨が言った。

「花梨もお疲れ様」 サユリはホッとした気持ちを感じた。

「サユリちゃ~ん、お友達?」

マキを見た花梨がサユリに聞いた。

「そうよ。マキちゃんって言うの。連れてきちゃった」

「すみません・・・。なんか・・・」マキが申し訳なさそうに言う。

「いいのよ!仲間は多いのに越した事ないし。さ、乾杯しま

しょ」と言いながら花梨がグラスを用意した。

「じゃあ、マキちゃんこれからもよろしくね。かんぱ~い」

花梨の音頭でサユリ達はグラスを合わせた。

「マキちゃん、お腹すいてない?」とサユリがマキに聞いた。

「うん、少し減ってるかな」お腹を押さえながらマキが言った。

「花梨の料理マジうまいよ」とももがマキに言った。

「へぇ~。オススメは何かあるの?」

「キムチ鍋。絶品だよ!」ももが隣のテーブルに置かれてい

る鍋を指差した。

それを見たマキが鍋を頼もうと思った瞬間に

「キムチ鍋、ちょうだい」とサユリが花梨に言った。

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