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2007年3月26日 (月)

星のお姫さま⑬

二人はタクシーを拾って新宿へ向かった。

サユリはタクシーの中から、ももへメールを送った。するともも

からすぐさま電話がかかってきた。ももはすでに花梨の店に居

るらしい。

「すぐ着くから。うん、じゃあね!」 サユリは電話を切った。

「サユリさん。私行って大丈夫?お友達と約束なんじゃないの

?」 マキが心配そうに聞いた。

「大丈夫よ。約束じゃないし、私の友達をマキちゃんに紹介した

いし、新年会もやってないじゃん」

「そっか!なんだかんだ言ってやってなかったね」

「そうそう!二人じゃないけど、新年会やろうよ」

しばらくしてタクシーは新宿に着いた。

花梨の働く店は新宿2丁目にある。オカマバーの激戦区だ。

二人はタクシーを降りた。

「ここ。ここ」 サユリは指を差した。

“BEARD PRINCESS” ビアド プリンセス。

あご髭の王女と言う意味の店だ。入り口は地下に降りる階段に

なっている。

サユリとマキは階段を降りていった。

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2007年3月19日 (月)

星のお姫さま⑫

サユリの一日が終わった。今日も何事もなく普通に終わる事が

できた。

サユリが帰り支度をしながら携帯を見るとメール受信があった。

メールを開くとももからのメールだった。

『今日、花梨のトコ行くから一緒にどう?』

と書かれていた。

「サユリさん。どうしたの?嫌なメール?」とマキが声をかけた。

「ううん。そうじゃないよ」 サユリが首を振った。

「マキなんかメール一件もないよ・・・。こんなケータイ捨てようか

な」と少しふてくされて言った。

「あはははは」 サユリは思わず笑ってしまった。

店のネオンも消えて、コンパニオン達がぞくぞくと帰って帰って

行く。

「マキちゃん。今日これからヒマ?」とサユリがマキに聞いた。

「ヒマだよ・・・。帰るだけもん」

「ちょっと寄り道していかない?」

「いいよ!何処行くの?」

「新宿2丁目。友達が働いているオカマバー」

「行く。行く。楽しそう!!」 マキが満面の笑みで言った。

「よし!キマリ!じゃあ行こう!」 

サユリとマキは二人で一緒に店を出た。

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2007年3月12日 (月)

星のお姫さま⑪

「サユリさん。お願いします」とボーイが待合室にいるサユリに

声をかけた。

「はい。今行きます」

「サユリさん」とマキが言いながら、右手の親指を突き出した。

サユリも同じポーズをとって無言で返事をする。

サユリとマキ、二人だけの挨拶だ。

ホステスの待合室は店の地下にある。ホステスは階段を上が

ってきて、お客の待合室のある1階の踊り場でお客と顔を合わ

すのだ。そして階段でさらに上へ上がり、部屋まで一緒にいく

のである。

柴田と名乗る客はサユリの常連客の一人だ。

年齢は自称43歳。結婚もしていて子供もいるらしい。

しかしサユリにとっては、それが嘘でも本当でも仕事をする上

で問題ではない。それよりもお客が楽しんでもらう事と自分が

嫌な思いをしない事の方が大事な事なのだ。

この柴田と言う客はサユリにとって、その大事な事を満たせる

客の一人だ。

「柴田さん、久しぶり。元気だった?」

「ああ、元気だったよ。今日はカミさんが実家に帰っているから

来てしまったよ」と柴田と名乗る客は照れくさそうに言った。

そんな挨拶を交わして、サユリと柴田は部屋に入っていった。

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2007年3月 5日 (月)

星のお姫さま⑩

駅に到着した二人は、店に電話をした。出勤時は駅まで迎えに

来てくれるのだ。

吉原はソープランドの激戦区なので、各ソープランドでお客の送

迎をサービスでやっている店が多いのだ。

お客は最寄り駅から電話して迎えに来てもらうのである。

サユリ達の出勤時もそのお客用の送迎車を利用して迎えにき

てもらうのであった。

いつものように迎えに来てもらい、いつもと変わらない普通の日

だった。

サユリ達が店に着くと、ボーイが「おはようございます」と挨拶を

してきた。

「おはようございます」と二人も返事をする。本当にいつもと変わ

らない日だった。

「サユリさん、今日予約入っていますよ。5時から」と予約の電

話をとっているボーイから言われた。

ソープランドでは人気のあるホステスは予約が入る事が多い。

サユリも予約される人気ホステスの一人だった。

ここ“星のお姫さま”では予約の入るホステスじゃないとフリー

の客はつけてもらえない。店からすれば予約されるホステスく

らいじゃないとフリーの客に喜んでもらえない、という考えだ。

「5時?時間ないわね。ね、名前は?」 サユリは確認をした。

「シバタ様、という方ですが」

「柴田さんか。ありがと」

ソープランドで予約をする場合、名前を名乗らなければならな

い。しかし、本名かどうかの確認などは一切しない。お客によっ

ては、あきらかに偽名と思われる名前を言う人もいる。サユリ

達ホステスは予約時の名前を覚えておいて、顔と名前を一致

させるのだ。

「柴田さん。久しぶりだな」 と独り言をつぶやいて、サユリは

仕事の準備を始めた。

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