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2007年2月26日 (月)

星のお姫さま⑨

マキは、サユリの後輩にあたる。

入店当時からサユリの事を姉さんのように慕っているのだ。

マキは元々ヘルスで働いていた。

マキにもサユリのように風俗で働く目的があった。

それは自分の店を持つという事。

自分が大好きなネイルサロンを持ちたいという夢をもって

福島から上京してきたのだ。

お金を貯めたいが、OLでは何年かかるか分からない。

短期で多く稼ぐ為に、風俗の世界に飛び込んだ。

とはいうもの、風俗のイロハも知らないマキにとって風俗は

未知の世界。自分なりに色々調べてヘルスで働く事を決めた

のだ。

しかしヘルスとは名ばかりで、本番行為を店が強要していた。

風営法では、あらゆる風俗において本番行為は禁止されてい

る。にも関らず、店の売り上げの為に「本番をやって客を引き

付けろ」と言われていた。

風俗界の事を知らないマキにとって、それが当たり前だと思っ

ていた。

正直マキもヘルスで本番行為をやっていた。しかし店はヘルス

だったので、シャワールームしかなく衛生面で不安だった。

マキが直接、お客の身体を洗えない狭いシャワールームしか

ない店だった。

結局、三ヶ月でヘルスを辞めてしまった。

しかしヘルスでの本番行為のおかげでマキの中に一つの境界

線を引いた。“本番行為の方がお金になる”と。

そして行きついたのがソープランドだった。

数あるソープランドの中から“星のお姫さま”を選んだのは単

なる偶然。

マキの入店初日、色々教えてくれたのがサユリだった。

それ以来マキはサユリを慕うようになったのだ。

サユリもマキを可愛がっていた。

なんとなく憎めないキャラのマキに愛情にも似た感覚を抱いて

いた。きっとマキがサユリを信頼しているのがサユリ自身にも

感じる事ができたからだ。

二人を乗せた電車は鶯谷駅に到着した。

「サユリさん。今日もお互いがんばろ~ね」

そういうマキの笑顔を言葉にサユリはいつも元気づけられる。

「うん。がんばろ~ね」

サユリもマキに笑顔で返した。

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2007年2月19日 (月)

星のお姫さま⑧

サユリは電車に乗っていた。

サユリは遅番の出勤の為、電車に乗るのは15時頃だった。

数多い風俗の中でソープランドを選んだのは、衛生面が一番

しっかりしていそうだったのでサユリはソープ嬢をやっている。

サユリの働いている店“星のお姫様”では月一回のHIVの検

査をやっていて、陽性の場合は店をクビになってしまうのだ。

そんなリスクを犯してでも、サユリには風俗で働く理由がある。

全ては娘の美由紀の為だ。

別れた夫からは一切の慰謝料を拒否した。

慰謝料に縛られて、関係を保つのが嫌だったのである。

別れた理由が夫によるDVのせいもあって顔も見たくなかっ

た。

しかし、娘には両親が離婚した事で嫌な思いをさせたくない。

その為に1千万円貯めるという目標を立てて、この世界に踏

み込んだのだった。

その目標にももうすぐ手が届きそうな位になっていた。

電車から窓の外の景色を見ていると、色々な事を思い出す。

今までの事やこれからの事・・・。

サユリは深いため息をついた。

その時、後ろから肩を叩かれた。

「おはようございます」

サユリと一緒に働いているマキだった。

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2007年2月12日 (月)

星のお姫さま⑦

「ママ、ありがとう!楽しかったよ。またね」

美由紀と実家の前で別れる時に、こんな事を言われた。

せめて正月くらい一緒にいてやりたいのだが、サユリの仕事

は年中無休の仕事だ。

サユリはマンションに戻った。花梨とももがテレビを観ていた。

サユリはこのマンションに戻って花梨やももと会うと、不思議

と元気になるのだ。

「おかえり、サユリさん。楽しかった?」とももが笑顔で言った。

「うん。楽しかったよ。ありがとね!ももちゃん」

「何?何?この雰囲気?」 花梨が口を挟む。

「なんでもないよ!ももちゃんにお年玉もらったの」

「え~~~~!私にもちょうだいよ~~」とオカマバーで働い

ている時と同じテンションで花梨がももにねだった。

「あははは。なんかこの感じ久しぶりだね」とももが言った。

この3人は花梨が働いているオカマバーで知り合って今に

至っている。

「本当に昨日の事のように思い出すね。あの日の事」

サユリも懐かしんでいた。

「そうよね・・・。あんた達は、男運ないからね」と花梨が皮肉

った。

その言葉を聞いた2人が声をそろえて言った。

「うるさ~い!」

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2007年2月 5日 (月)

星のお姫さま⑥

サユリが美由紀と神社に着くと、初詣の人で賑わっていた。

初詣は実家側の神社に行くのだが、この神社がいつも初詣の

参拝者ランキングで上位に入るくらいの人気の神社だった。

しかし、サユリは毎年来ている。これは風俗で働く前から変わ

っていない。

「ママ、すごい人だね」

「はぐれちゃダメよ。ママにちゃんと摑まって」

人の波に逆らう事なく進んで行き、本堂までたどり着いた。

サユリは美由紀に小銭を渡して「力一杯投げるのよ。そして

願い事をお願いするの」と言った。

「うん。分かった」と美由紀は小さい手でサユリの渡した小銭

を握り締めた。

二人で一緒にお賽銭箱めがけてお賽銭を投げた。

サユリは静かに手を合わせ“今年で今の仕事が終わる事が

できますように”と祈りを捧げた。

隣で美由紀は「ママと一緒に過ごせますように」と声を

出してお祈りをした。

その言葉を聞いたサユリは涙が出そうな位うれしかった。

涙を精一杯こらえて「大丈夫。すぐに一緒に暮らせるから」と

美由紀を抱きかかえて言った。

しばらく境内を散歩して、昼食をとった。

ももから貰ったしわくちゃな1万円札を見て、サユリはまた泣

きそうになった。

「おかあさん、どうしたの?」と美由紀が心配そうに言う。

「なんでもないよ」と平然を装うのが精一杯だった。

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