2007年8月27日 (月)

星のお姫さま 35

車に乗り込んだサユリはストーカー男を見た。

男はサユリ達を見ながら、何かを待っているようだった。

「じゃ、行きますよ」とドライバーの男が二人に声をかける。

「お願いします」とサユリが返した。

車は走り出したが、ストーカー男の視線はサユリ達の車を見

ているようだった。

マキは車に乗った瞬間、サユリの胸に顔をうずめてかがみこ

んだ。

そんなマキを見ていたサユリは、マキの事が本当に可哀想に

なってしまった。

車はロータリーを出て国道にさしかかった。

その時サユリはドライバーの男に

「ね。今日マキちゃん予約入っている?」

と聞いてみた。

するとドライバーの男は「わかんないっすね。確認してみます

?」と聞いてきた。

サユリは「お願いします」と言って確認してもらう事にした。

ドライバーの男は携帯電話で、確認をとった。

すると「マキさん、一発目で予約あるみたいっすね」と言った。

サユリとマキの不安は的中した。

二人は“間違いなくあのストーカー男だ!”と思った。

マキの震えはより激しくなっていった。

サユリは力いっぱいマキを抱きしめて「大丈夫。大丈夫だから

ね」と繰り返しマキに言った。

そして車は店に着いた。

サユリは「マキちゃん。行こう。安心して、ここはマキちゃんの

味方しかいないから」と諭すように言った。

一言も言葉を発さなかったマキが力ない声で

「うん」

と言った。

二人は車を降りて、店へ入って行った。

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2007年8月20日 (月)

星のお姫さま 34

駅に着いた二人は改札を出て、駅前のローターリーで送迎用

の車を探した。

いつも見慣れている車は見当たらなかった。

マキの震えはまだ止まっていない。サユリはマキの肩を抱いて

「大丈夫」と繰り返していた。

マキを気遣いながらサユリが視線を周りに送ると、ストーカー男

の姿が目に入った。

ストーカー男は携帯電話でどこかに電話をしている。

サユリは店に電話しているのだと察知した。

しばらくするとサユリの携帯電話が鳴った。

送迎の車のドライバーからの電話だった。

「もうすぐ着く」との連絡だ。

ほどなくして、サユリ達を乗せる送迎用の車が駅前ロータリー

へ入ってきた。

送迎用の車からは店に来ていた客が3名降りてきて、ドライバ

ーの男が「ありがとうございました」と言っていた。

客が完全にひけるのを待って、サユリはマキの肩を抱いたまま

歩きだした。

「おはようございます」とサユリがドライバーの男に声をかける。

すると男も「おはようございます」と返事をした。

そして、二人は車に乗り込んだ。

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2007年8月13日 (月)

星のお姫さま 33

二人は電車に乗った。

ストーカーの男も隣の車両に乗ってきた。

サユリとマキはシートに座って、あえて普通に振舞っていた。

会話が聞かれているとは思えないが、会話の内容もいつもの

ように話をしていた。

サユリが気づかれないようにストーカーの男に視線をやると、

男は携帯電話を見るふりをしながらこちらを伺っているのが分

かった。

サユリとマキも普通に振舞ってはいたが、次第に怖くなってきた

電車の中で襲われたりはしないと思うが、他人に尾行されるよ

うな事は誰だっていい気分はしない。

店の最寄駅までの時間がすごく長いものに感じた。

サユリは駅で降りた時に、すぐに送迎用の車に乗れるように電

車の中から店に電話をした。

到着時間を告げるとその時間に送迎があるようだ。

「よかったね。マキちゃん。すぐに迎えがくるってさ」

サユリは笑顔で言ったがマキは少し震えている様子だった。

「どうしたの?マキちゃん?」

「アイツが指名してきたらどうしよう?」 マキは明らかに怖がっ

ている。

「店の中でなにかあったらすぐボーイを呼べばいいよ」とサユリ

が言った。

ソープランドの部屋にはインターホンが設置されている。

コンパニオンはそのインターホンでボーイに連絡できるようにな

っている。

サユリはマキの恐怖心をとってあげようと必死だった。

しかし、マキの震えが止まらないうちに無常にも電車は駅に着

いた。

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2007年8月 6日 (月)

星のお姫さま 32

翌日、サユリはマキを迎えに行った。

マキが普段使っている駅で降り、マキに電話をした。

発信音が数秒鳴った後、マキがでた。

「もしもし、おはよう!」 マキが元気な声がした。

「おはよう!約束通り迎えにきたよ」

「サユリさん。改札のところにあるタバコの自販機の前に誰か

いる?」

サユリは自販機に目をやり「誰もいないよ」 と告げた。

するとマキはホッとした様子で 「よかった~。前はその辺にい

たんだよね。じゃあ、すぐ行くね。待ってて」 と言って電話を切

った。

サユリも安心した。とりあえず今日は平気そうだ。

しばらくするとマキがやってきた。

昨日の格好とは明らかに違う感じでいつもサユリが見ている

マキの姿だった。

マキはサユリに気がつくと手を振ってサユリに近づいてきた。

サユリもマキに手を振った。

マキが「サユリさ~ん」 と言いながら小走りになった瞬間、動き

が止まった。

サユリは異変にすぐ気づき、後ろを振り返った。

すると、後ろに20代くらいの男が一人立っていた。

サユリはその男がマキのストーカーだと初めて見たにも関らず

分かったのである。

「サユリさん・・・。あの人・・・」

マキが小声でサユリに言った。

「うん。私もすぐ分かったよ」

サユリも小声で言った。

その男は痩型で、髪の毛は若干長め。メガネをかけているフリ

ーター風の男だった。

サユリは「普通にして行こう」 とマキに言った。

マキも「うん」 とうなずいて、二人は改札を通ってホームへ歩い

て行った。

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2007年7月30日 (月)

星のお姫さま 31

サユリにはマキの辛さが正直よく分かっていなかった。

サユリ自身ストーカー被害にあった事がないからだ。

ただ、同じ職業の人間としてストーカー被害にあった時の気持

ちの辛さはなんとなく分かっているつもりではあった。

「マキちゃんさ、明日は出勤する?」

「う~ん・・・。正直考え中・・・」

「明日、出勤しようよ。私マキちゃん迎えに行くから一緒に行こう」

「サユリさんにそこまでしてもらう理由がないよ・・・」

「いいって!気にしないで。私だっていつそういう事になるか分

からないし、私にできる事は何でもしたいの」

サユリはマキの両手をとってそう言った。

「サユリさん・・・。ありがとう・・・」

「当欠の事も一緒に謝るから心配しないで大丈夫!」

サユリはそういって、右手の親指を突き出した。

マキはうつむいていた顔を少し上げ、同じポーズで返した。

「じゃあ、マキちゃん明日電話するね」

「うん。本当にありがとう・・・」 マキは少し涙ぐんでいた。

「水臭いじゃない。もしストーカーがいても私が守ってあげるから

ね。それじゃね。帰りは大丈夫?」

マキは美由紀の事を見て 「うん。今日は多分大丈夫だと思う」

と言った。

「なにかあったらすぐ電話してね。じゃあ、美由紀。お姉ちゃん

に挨拶して」 そう言ってサユリは美由紀の肩に手をかけた。

「お姉ちゃん。またね!バイバイ」 そう言う美由紀にマキは笑顔

で「またね!バイバイ」 と手を振った。

「じゃあね、マキちゃん」

サユリはそう言って美由紀とエスカレーターで降りていった。

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2007年7月23日 (月)

星のお姫さま 30

「あるお客さんに、ストーカーみたいにされちゃって・・・」

「えっ?そうなの?誰?私が知っている人?」

サユリは立て続けに質問をした。

「多分知らない人だと思う・・・。最近来た人で、ぶっちゃけモ

テそうな感じのタイプじゃないし、多分マキに優しくされてその

気になっちゃったんじゃないの?」

風俗を含めた水商売では、客がコンパニオンやホステスに惚

れるというのは日常茶飯事に起こる事だ。

店で働く人間としては、客に嫌われるより好かれたほうが仕事

がやりやすい。その為に、笑顔で接客もするし時には客をその

気にさせるような事を言ったりもする。

その言葉を商売のトークとしてとらえるか、本気ととらえるかは

客次第ということになる。

「そうだったの・・・」 サユリが同情するように言った。

「うん。昨日だって出勤しようと思っていたのに、家を出て駅に

着いたらその客が改札で待っててさ・・・。怖くなって家に戻ろう

としたんだけど、気づかれて家まで着いてこられても嫌だから

そのままタクシーで新宿まで行ったんだ。」

マキが当欠した理由を言った。

「タクシーで店まで着ちゃえばよかったのに」

サユリがそう言うと

「だって、出勤して店に来られても嫌でしょ?」

サユリはピンときた。昨夜、マキを指名したいと電話があった

のを思い出したのだ。サユリが待機室に戻る時に店のボーイ

が「すみません。今日マキさんお休みなんですよ」と断っていた

のを思いだした。

「そんな事があったのか・・・。でも相談くらいしてくれればいい

のに」 サユリは少し悲しいと思いながらそう言った。

「うん。相談しようと思ったけど、自分で蒔いた種だからね。そ

んな事でサユリさんに迷惑かけたくなかったんだよ」

サユリにはマキの優しい気持ちが逆に辛く思えた。

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2007年7月16日 (月)

星のお姫さま 29

「マキちゃん?」

サユリはエスカレーターですれ違う時に言った。

「えっ?サユリさん?」

マキも驚いた表情でサユリを見た。

「マキちゃん。上がった所で待ってて」

「うん」

二人は偶然にも会う事ができた。

サユリは驚きとうれしさが入り混じった、なんとも言えない気持

ちだった。

「ママ、あの人誰?」 美由紀がサユリに聞いた。

「あの人はママのお友達。美由紀、ママお友達と少しお話した

いからちょっといい?」

「うん」

サユリは反対側のエスカレーターに乗って、マキのいるフロア

へ向かった。

マキは、エスカレーターの踊り場にいた。

服装はいつも仕事の時とは違う感じで、あきらかに普段着とい

った感じだ。

「マキちゃん。どうしたの?何かあった?」

サユリの第一声だった。

「ごめんなさい。メールも電話もしなくて・・・」

「そんなのはいいけど。心配したよ」

うつむくマキを見た美由紀が言った。

「こんにちは」

その言葉を聞いたマキが笑顔で 「こんにちは」と返した。

サユリはマキの笑顔を見て少しホッとした。

「マキちゃん。娘の美由紀よ」

紹介された美由紀は軽く会釈をした。

「美由紀。お友達のマキちゃん」

マキは膝を曲げ、美由紀と同じ目線になって、こう言った。

「美由紀ちゃん。ママの事好き?」

すると美由紀は 「うん。大好き」と答えた。

美由紀とマキのやりとりを見たサユリはすごく心が温かくなっ

た気がした。

「ところでマキちゃん。ど~して当欠したの?」

サユリは単刀直入に聞いてみた。

「う~ん・・・。実は・・・」

マキが口を開いた。

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2007年7月 9日 (月)

星のお姫さま 28

この日は晴れていた。

いつも美由紀と会う時は、何かをすると決まっている訳ではな

い。食事をしたり買い物をしたりと普通の事をしている。

いつものように美由紀を迎えに行き、実家の近くのデパートへ

行った。この日は平日の昼と言う事もあってデパートは比較的

に空いていた。

「美由紀、何食べようか?」

「ママは何食べたいの?」

「ママはねぇ~・・・、何でもいいよ」

「美由紀も何でもいいよ」 美由紀が笑顔でそう言った。

こんなありきたりな時間をサユリは大切に感じていた。

離婚した事に後悔はしていないが、何の罪もない美由紀に

辛い思いをさせるのは、心が痛い思いでいっぱいだった。

二人はデパート内のレストランに入った。和・洋・中の揃っ

たレストランだ。

そこで遅めの昼食をとった後、デパートで買い物をした。

サユリは、せめてもの罪滅ぼしの意味で美由紀の欲しい物

は何でも買ってやりたいと思っているのだが、美由紀はあま

り欲しがる事をしない。

自分のしつけが正しかったとは思わないが、子供ながらに今

の環境が理解できているものだとサユリは思っていた。

結局、この日は美由紀の洋服を買っただけで買い物は終わっ

た。

買い物が終わると実家に戻り、夜まで一緒に過ごす。

サユリと美由紀は手をつないで、デパートのエスカレーターに

乗っていた。

その時、反対側のエスカレーターをマキが上がってきた。

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2007年7月 2日 (月)

星のお姫さま 27

次の日、サユリが目をさますと時計は午前10時をまわってい

た。

今日は美由紀と会う約束をしている。

今日だけじゃなく、休みの日は基本的に美由紀に会うように

している。

しかし、サユリにはマキの事が気がかりで仕方なかった。

目をさまして携帯を見ても、マキからメールも着信もなかった

サユリはマキの事を考えながら、出かける準備を始めた。

花梨やももはまだ寝ているようで、起こさないように気を遣い

静かに支度をしている。

サユリは準備が済み、部屋を出てから携帯で美由紀に電話

をかけた。

携帯電話の液晶に“呼び出し中”の文字が出ている。

しばらくすると美由紀が電話に出た。 「もしもし、ママ?」

サユリは少しホッとして

「もしもし、美由紀?おはよう。これから迎えに行くけどいい?

「うん。待ってるね、ママ!早く来てね」

時間にして数十秒の会話でサユリはうれしくなった。

それと同時に“今の生活を早く終わらせないと”と思うのであっ

た。

しかし、どうしてもマキの事が頭から離れない。

美由紀に会いたいけど、マキの事も探したい。

複雑な気持ちでサユリは美由紀に会いに行った。

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2007年6月25日 (月)

星のお姫さま 26

メールはももからのメールだった。

サユリは少しがっかりしてメールを見た。

『お疲れ。これから帰るけど、何か買っていく?』

ももは、このようなメールをサユリや花梨によく送ってくる。

サユリはももへ返信をした。

『ありがと。大丈夫だよ』

「ももちゃんも、仕事終わったみたいね」

そう言いながら、サユリは携帯をテーブルに置いた。

「まったく、のん気ね。ももちゃんは」 花梨が少しふてくされた

感じで言った。

「知らないもん。仕方ないよ」 ももをフォローするようにサユリ

は言った。

サユリにはマキが仕事を休む理由が全く分からなかった。

前の日もいつものように普通に別れたし、何か悩み事がある

話も聞いた事がない。ましてや当欠の日に花梨が新宿で見か

けたなんて・・・。

「サユリちゃ~ん、明日休みでしょ?マキちゃんの家に行って

みれば?」

「ん~。明日も美由紀と会う約束してるんだよね・・・」

「そっか・・・。まぁ電話やメールくらいしたら?」

「そうだね。それくらいはしてみるよ」

さすがに今の深夜の時間に電話をかけるのは気がひける。

“明日電話してみよう”とサユリは思った。

「ちょっと今日は疲れた。先にシャワー浴びていい?」

サユリは花梨にそう言った。

「いいわよ。今日はもう寝たほうがいいわ。明日に備えて」

「ありがと。じゃあ、先に休ませてもらうわ。ももちゃんにもそう

言っておいて」

サユリはシャワーを浴びてから、ベットに入った。

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